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コラム

外周監視カメラの落雷対策方法について解説

2026/05/21
ICTソリューション

目次

故障を防ぐための5つの具体策と設計ポイント

屋外に設置される外周監視カメラは、工場・倉庫・物流センター・商業施設などのセキュリティ対策として非常に重要な役割を担っています。24時間365日、敷地の外周を監視し続けるこれらのカメラは、不法侵入の抑止・証拠映像の確保・事故対応など、多方面で活躍しています。
しかし、屋外に設置される性質上、外周監視カメラは避けて通れないリスクを抱えています。それが「落雷による故障」です。
「突然カメラが映らなくなった」「録画装置ごとダウンした」「複数台が同時に故障した」——こうしたトラブルの多くは、実は直撃雷ではなく、雷サージ(過電圧)による被害です。適切な対策を講じていない場合、1回の落雷でシステム全体が停止し、数百万円規模の損害が発生することもあります。
本記事では、外周監視カメラにおける落雷リスクの仕組みから、実務で使える5つの具体的な対策方法、設計時のポイント、よくある間違いまでを体系的に解説します。設備担当者・電気工事業者・セキュリティ設計者の方々にとって、すぐに実践できる内容を網羅しています。

なぜ外周監視カメラは落雷で故障するのか?

原因は「雷サージ(誘導雷)」

落雷による被害というと、雷が直接カメラに命中する「直撃雷」をイメージする方が多いかもしれません。しかし実際には、直撃雷による被害は全体のごく一部に過ぎません。監視カメラ故障の大半を占めるのが、「誘導雷」によって発生する雷サージ(過電圧)です。
雷が建物や地面の近くに落ちると、その周囲に強力な電磁界が発生します。この電磁界の変化が、付近を通る配線に電圧を誘導します。これが誘導雷のメカニズムです。誘導された過電圧(雷サージ)は、以下の経路を通って機器内部に侵入します。
・電源線(AC100V・DC電源ライン)
・LANケーブル・通信線
・映像信号ライン(同軸ケーブルなど)
・アース線(逆流するケースも)
これらの経路から侵入した雷サージは、数千ボルト〜数万ボルトに達することがあり、定格電圧数ボルト〜数十ボルトで動作するカメラの内部回路を一瞬で破壊します。

外周カメラに被害が集中しやすい理由

すべての電子機器が雷サージのリスクを抱えていますが、外周監視カメラは特に被害を受けやすい条件が揃っています。その主な理由は以下の通りです。

屋外設置による高い誘導リスク

外周カメラは文字通り屋外に設置されます。建屋内の機器とは異なり、建物の壁や屋根による電磁シールド効果が期待できません。雷が近くに落ちた際、配線に誘導される電圧が大きくなりやすい環境です。また、ポールや壁面の高所に設置されることも多く、雷が落ちやすい高い位置に露出している点も不利に働きます。

長距離配線によるサージの伝播

外周カメラから制御室・録画装置までの距離は、施設の規模によっては数十メートルから数百メートルに及ぶことがあります。配線が長くなるほど、雷サージを「受信するアンテナ」として機能しやすくなり、侵入するサージのエネルギーも大きくなります。建物内の機器と比較して、格段にリスクが高い状況と言えます。

ネットワーク接続による被害の波及

近年普及しているIPカメラ・PoEカメラは、LANケーブルを通じてネットワークスイッチやレコーダーに接続されています。1台のカメラが雷サージを受けると、そのサージがLANケーブルを伝わってスイッチ・他のカメラ・録画装置・さらにはサーバーにまで波及するリスクがあります。「1台の故障」で済まず、「システム全体の停止」になるケースが多いのはこのためです。

雷サージの種類と被害パターンを理解する

雷サージの種類

雷サージは発生源と伝播経路によって以下のように分類されます。それぞれの特徴を理解することが、適切な対策選択につながります。

種類
発生原因
主な侵入経路
リスクレベル
直撃雷
建物・設備への直接落雷
全経路
最高
誘導雷(電磁誘導)
近傍への落雷による電磁界変化
電源・通信線
誘導雷(静電誘導)
雷雲の電荷による静電誘導
露出した配線
中〜高
逆流サージ
アース経路からの逆流
アース線

被害パターンと症状

雷サージによる被害は、機器の損傷具合によって以下のパターンに分けられます。

即時完全故障

最も一般的な被害パターンです。サージが流入した瞬間に内部回路(センサー・チップ・コンデンサなど)が焼損し、カメラが完全に動作しなくなります。映像が映らない・電源が入らない・PoEで給電できないなどの症状が現れます。

遅延故障(潜伏故障)

サージを受けた直後には動作しているように見えても、数日〜数週間後に突然故障するケースです。これは内部回路が部分的にダメージを受け、時間の経過とともに劣化が進む「潜伏障害」と呼ばれる現象です。原因の特定が難しく、対策が後手に回りやすいため注意が必要です。

システム全体の停止

ネットワーク経由でサージが伝播し、カメラだけでなくスイッチ・レコーダー・監視PC・さらには基幹ネットワーク機器まで被害が及ぶケースです。被害範囲が広く、復旧に多くの時間とコストがかかります。

外周監視カメラの落雷対策|5つの具体的方法

ここからは、実務で必須となる5つの対策を詳しく解説します。これらは「どれか1つをやれば十分」というものではなく、組み合わせて実施することで初めて十分な効果を発揮します。

① サージプロテクター(SPD)の設置

落雷対策の中で最も基本かつ重要なのが、サージプロテクター(SPD:Surge Protective Device)の設置です。SPDは異常電圧(サージ)を検知すると、電気を安全に逃がすことで接続機器を保護する装置です。

設置が必要な経路

・電源ライン用SPD:カメラへの電源供給ラインに設置
・LAN用SPD:LANケーブルの中継点に設置(PoEカメラは必須)
・映像信号用SPD:同軸ケーブルを使用する場合に設置

SPD選定のポイント

SPDは種類・性能・設置場所によって選択が異なります。主に以下の性能指標を確認して選定してください。

項目
内容
目安
最大連続使用電圧(Uc)
常時接続できる最大電圧
定格電圧の1.1倍以上
定格放電電流(In)
繰り返し放電できる電流
5kA以上推奨
最大放電電流(Imax)
1回放電できる最大電流
10〜20kA以上
電圧防護レベル(Up)
保護後の残留電圧
機器耐電圧の80%以下
クラス分類
IEC/JIS規格の分類
屋外はクラスI+II

※ SPDは消耗品です。大きなサージを受けると保護素子(MOV・GDTなど)が劣化・消耗します。定期的な点検・交換が必要です。

② 接地(アース)を適切に行う

SPDがサージを「逃がす」ためには、逃がし先となる適切な接地(アース)が不可欠です。いくら高性能なSPDを設置しても、アースが不十分では意味がありません。

接地抵抗値の管理

接地抵抗値が高いと、サージが十分に逃げず機器に流れ込んでしまいます。一般的な目安として、電気設備技術基準では以下が定められています。
・A種接地工事:10Ω以下(高圧機器用)
・D種接地工事:100Ω以下(低圧機器・一般電子機器用)
外周カメラシステムの場合、D種接地以上の品質が求められますが、落雷リスクが高い地域や大規模システムでは、10Ω以下を目指すことが望ましいです。

共通接地と個別接地

複数の機器を同一のアース極に接続する「共通接地」は、管理が容易な反面、一方の機器に流れ込んだサージが逆流して他の機器に被害を与えるリスクがあります。特に、カメラのアースと建物の電気設備のアースを共通にする場合は設計に注意が必要です。接地設計は電気技術者と連携して行うことを強く推奨します。

※ 接地工事は電気工事士の資格が必要です。DIYでの施工は法的にもリスク管理の面でも推奨しません。

③ 配線ルートの最適化

SPDや接地だけでなく、配線設計そのものを見直すことで雷サージの侵入リスクを大幅に低減できます。これは新規設置時のコスト効率が高い対策ですが、既存設備の改修時にも積極的に取り入れるべき内容です。

電源線と通信線の分離

電源線と通信線(LAN・映像信号)を同一の配管・ケーブルラックにまとめることは避けてください。電源線にサージが流れると、電磁誘導によって隣接する通信線にもサージが誘導される可能性があります。物理的に離して配線することが基本です。

シールドケーブルの活用

LANケーブルにはシールドタイプ(STP:シールデッド・ツイステッド・ペア)を使用し、シールドを適切に接地することで、電磁誘導によるサージ侵入を抑制できます。特に長距離配線や屋外露出配線では、シールドケーブルの効果が顕著です。

地中配線の活用

可能な場合は、外周カメラへの配線を地中に埋設することを検討してください。地中配線は電磁誘導の影響を受けにくく、物理的な保護にもなります。ただし、地中でも完全にサージから守られるわけではないため、SPDとの併用が前提です。

避雷針・高所構造物との離隔

避雷針や高い金属構造物(フェンス・照明ポールなど)に近接して配線することは極力避けてください。落雷時に大電流が流れるこれらの構造物の近傍では、強い電磁界が発生し、配線へのサージ誘導リスクが急上昇します。

④ PoE(LAN給電)の雷対策

PoE(Power over Ethernet)は、LANケーブル1本で電源と通信を同時に供給する技術で、現在のIPカメラシステムでは主流となっています。PoEは配線をシンプルにする利点がある一方、LANケーブルが電源経路を兼ねることで、雷サージの侵入経路が増えるというデメリットもあります。

PoE対応SPDの選択

通常のLAN用SPDはPoEに非対応の場合があります。PoEシステムには必ず「PoE対応」と明記されたSPDを選択してください。PoE非対応のSPDでは、電源ラインの保護が不十分になるだけでなく、SPD自体がPoE給電によって誤動作・損傷するリスクがあります。

スイッチ側の保護

PoEスイッチ(PoEハブ)はシステムの中核であり、ここが故障すると配下のカメラすべてが停止します。スイッチの電源入力にSPDを設置するとともに、スイッチ自体に雷サージ保護機能が内蔵されているかどうかを確認することが重要です。

PoEエクステンダーの使用に注意

遠距離配線のためにPoEエクステンダーを使用している場合、エクステンダーが中継点でサージをブーストして送り出してしまうケースがあります。エクステンダーの前後にSPDを設置するか、エクステンダー自体に保護機能があるものを選択してください。

⑤ 機器の分散設計(リスク分散)

システム設計の段階から「落雷被害を受けても全滅しない構成」を意識することが、実務上のリスク管理として非常に重要です。

録画装置の分散配置

全カメラの映像を1台のレコーダーで管理している場合、そのレコーダーが故障するとすべての録画機能が失われます。エリアごとにレコーダーを分散配置することで、1系統が被害を受けても他のエリアは継続稼働できます。

電源系統の分離

カメラシステムの電源を建物の主電源系統から分離し、専用の電源系統・UPS(無停電電源装置)を使用することで、雷サージの影響を建物全体の電気系統から遮断できます。

エリアごとの独立構成

大規模な外周監視システムでは、北側エリア・南側エリア・東西エリアなど、物理的・ネットワーク的に独立した構成にすることが理想的です。1エリアの被害が他エリアに波及しない設計は、BCP(事業継続計画)の観点からも重要です。

やってはいけないNG対策

落雷対策は、間違えるとかえってリスクが上昇したり、効果がまったくなかったりするケースがあります。よくある失敗例を確認してください。

NG① SPDを電源ラインのみに設置する

電源ラインのSPDだけを設置し、LAN・映像信号ラインを無防備のままにするケースは非常に多いです。サージは複数の経路から同時に侵入するため、1経路だけ対策しても残りの経路から機器が破壊されます。全経路への設置が原則です。

NG② アースを接続しない(未接地SPD)

SPDを設置したにもかかわらず、アースを接続しないまま使用しているケースがあります。SPDはサージを「アースに逃がす」装置ですので、アース未接続では何の保護効果もありません。最悪の場合、SPDが破壊されてショートし、二次被害が発生することもあります。

NG③ 安価な汎用品で代替する

家電量販店で販売されている一般家庭用の雷サージタップは、屋外設備の保護には性能が不十分です。屋外設備用のSPDは、放電電流容量・応答速度・耐久性が大きく異なります。コスト削減のため汎用品を流用することは避けてください。

NG④ 後付けの「点」対策

設備完成後に気になった部分だけSPDを追加するような後付け対応は、効果が限定的です。配線ルート・接地・SPD設置・機器構成をトータルで設計する「面の対策」でなければ、十分な保護は実現できません。

設計時に押さえるべき重要ポイント

落雷対策は設備完成後に後付けするより、設計段階から組み込む方が効果的かつコスト効率が高くなります。以下のポイントを新規設計・リニューアル時に必ず検討してください。
・落雷リスクの現地調査:施設の立地・周辺環境・過去の落雷歴を確認する
・配線経路の事前設計:電源・通信線の分離ルート、地中配線の可否を検討する
・SPD設置箇所の明確化:全経路・全中継点への設置計画を図面に落とし込む
・接地設計の実施:接地極の配置・抵抗値目標・工事仕様を事前に決定する
・機器選定時の耐サージ性能確認:カメラ・スイッチ・レコーダーの耐サージ規格を確認する
・定期メンテナンス計画の策定:SPDの点検周期・交換基準を事前に設定する

外周監視カメラの落雷対策チェックリスト

以下の項目をすべて満たしていることを確認してください。1つでも欠けている場合、リスクが残っています。

まとめ|落雷対策は「設計」で決まる

外周監視カメラにおける落雷対策は、単一の機器を導入するだけでは不十分です。重要なのは、配線・接地・保護機器・システム構成をトータルで設計する「面の対策」です。
特に以下の5点が対策の柱となります。
・サージプロテクター(SPD)の全経路への設置
・適切な接地工事(アース)の実施
・配線設計の最適化(ルート分離・シールドケーブル・地中配線)
・PoEシステムへの専用対策
・機器・システムの分散設計
落雷対策のコストを「無駄な出費」と見るか、「リスクヘッジへの投資」と見るかで、施設の安全性とBCPは大きく変わります。1回の落雷被害が数百万円規模になる可能性を考えると、事前対策は非常に合理的な判断です。
新規設置・リニューアルの際は、本記事のポイントを参考に、専門の電気技術者・セキュリティシステム設計者と連携しながら、万全の落雷対策を実施してください。

チェックリストに1つでも「×」があった方へ

上記のチェックリストを確認して、「未対策の項目がある」「自社設備の状態が把握できていない」と感じた方は、ぜひ一度プロの目で現状を相談することをお勧めします。

当社では、落雷リスク対策の一環で、既存の外周監視カメラシステムを中心にご提案させて頂いております。
対策が必要かどうかの判断だけでも、お気軽にご連絡ください。


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