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個別レポート

炭素会計を「経営のOS」に変える SSBJ基準対応と戦略的実務の全解説

2026/03/27
環境コンサルティング

炭素会計は、従来の財務会計のロジックを環境負荷(温室効果ガス)に応用した「経営のOS」です。2025年3月のSSBJ基準確定により、有価証券報告書レベルの信頼性と財務情報との結合性が不可欠となり、単なる数値算定から戦略的な経営管理への転換が求められています。

1. 炭素会計の本質:「広義の会計」として捉えるべき理由

「会計」というと、多くの方は財務諸表や損益計算書を思い浮かべるかもしれません。しかし会計の本質は、資源・活動・成果に関する情報を体系的に測定・記録・分析・報告するプロセスです。この広義の定義に立てば、温室効果ガスという「環境負荷」を管理する炭素会計は、財務会計と同じ論理構造を持つ経営管理の仕組みです。

1-1. 財務会計と共通する「会計のロジック」

炭素会計は以下のプロセスで構成されており、財務会計と同一のロジックで動いています。

・記録:Scope 1・2・3の排出量データを活動量ベースで収集する
・分類:事業部門・製品・サプライチェーンごとに排出源を分類する
・分析:排出量の推移・原因・削減余地を定量的に評価する
・報告:有価証券報告書・CDP・社外開示資料として発信する

財務会計を実施しない企業が存在しないのと同様に、気候変動対応が経営の前提となる時代において、炭素会計は必須の取り組みとなっていくことでしょう。

1-2. 企業の「説明責任(アカウンタビリティ)」を果たすツール

炭素会計は、投資家・金融機関・行政・取引先といった幅広いステークホルダーに対して、自社の気候変動対応を客観的なデータで示す手段です。定性的なコミットメントだけでは不十分であり、「測定して、管理して、報告する」という会計の基本ループが企業の信頼性を支えます。
更に、炭素だけでなく環境全般に関しても、いずれ同様な「会計」を求められてくると想定され、広義の環境“会計”についても準備を進めておく必要があると考えられます。

2. 国内外の最新潮流と義務化のインパクト

2-1. SSBJ基準(日本版S1・S2)の予定

2025年3月、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は日本初のサステナビリティ開示基準を公表しました。国際基準であるISSB基準(IFRS S1・S2)との整合性を図ったもので、日本企業の開示を世界水準に合わせることが目的です。

実務担当者が特に押さえるべき要点は以下のとおりです。

・Scope 1〜3の排出量開示が標準化(任意から義務へ移行)
※適用対象や経過措置・重要性判断などがある
・財務情報との「コネクティビティ(結合性)」の明確化が求められる
・有価証券報告書での開示=財務開示と同レベルの信頼性・正確性が必要
・プライム市場上場企業から順次義務化(時価総額の大きな企業が先行)
・サプライチェーンへのデータ要求急増 → 中小企業・取引先への波及が加速

2-2. 国際イニシアチブとの連動

SSBJ基準への対応と並行して、以下の国際的な枠組みへの対応も実務として求められます。

SBT(Science Based Targets)

パリ協定の1.5℃目標と整合した、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標です。国際イニシアチブ(SBTi)の認定を取得することで、脱炭素への取り組みが国際的に評価され、企業の信頼性向上につながります。

CDP(Carbon Disclosure Project)

気候変動・水・森林などの環境情報開示を求める英国発の国際的非営利団体です。機関投資家や大手バイヤーがCDPスコアを調達基準・投資判断に活用しており、サプライヤーへの開示要求も強まっています。

3. 企業が直面する実務的課題とリスク

3-1. データ基盤の脆弱性

SSBJ基準は財務諸表と同時期・同範囲での開示を求めています。しかし多くの企業では、環境データと財務データが別々のシステムで管理されており、統合開示に向けた基盤整備が追いついていないのが現状です。

3-2. Scope 3対応の難易度

上場企業は取引先に対してScope 3算定に必要な詳細データを要求し始めています。一方で、データの収集・算定・管理は複数部門にまたがるため、体制整備なしには対応が困難です。特に中小企業・サプライヤーにとっては大きな実務負担となります。

3-3. 第三者保証コストへの備え

サステナビリティ情報は財務諸表に準ずる水準で検証される時代へと移行しています。第三者保証の義務化が順次進む中、早期から開示精度を高めておくことが、将来の対応コスト・リスクを最小化する鍵となります。

4. 戦略的導入ステップ:データから経営判断へ

炭素会計を「単なる数値算定作業」で終わらせないためには、以下のステップで経営管理会計としての昇華を図ることが重要です。

STEP 1:現状把握とスコープ設定

・Scope 1・2・3の算定対象範囲を明確化し、排出量の全体像を把握する
・自社がSSBJ義務化の対象かを確認し、開示タイムラインを把握する

STEP 2:データ収集フローの整備

・財務部門・情報システム部門と連携し、財務データと環境データを一体管理できる体制を構築する
・取引先・サプライヤーへのデータ収集依頼フローを早期に設計する

STEP 3:気候関連リスクの定量化

・SSBJ基準が求める移行リスク(政策・市場変動)・物理リスク(気象変動)を定量的に評価する
・シナリオ分析を通じ、財務インパクトとして示せる形式に落とし込む

STEP 4:レポート化と継続改善

・有価証券報告書・CDP・社内経営報告への反映フォーマットを確立する
・年度ごとの比較可能性を担保するため、評価基準・集計ロジックを標準化・文書化する
・第三者保証を念頭に置いた内部検証プロセスを導入する

5. よくある課題と対処法

課題① データ収集の煩雑さ

複数部門にまたがるデータを集約することが難しく、初期段階でつまずく企業が多くあります。対処法として、収集担当者・フォーマット・提出期日を社内ルール化し、担当部門への教育と合わせて推進することが有効です。

課題② 評価基準のばらつき

コストや排出量の定義が担当者・部門ごとに異なると、年度をまたいだ比較ができなくなります。算定ガイドラインと用語集を整備し、社内共通の基準として定着させることが必要です。

課題③ 継続運用の難しさ

初年度は導入できても、翌年度以降に形骸化するケースが多く見られます。経営層を巻き込んだKPI設定と、定期的なレビュー体制の確立が継続運用の鍵となります。

6. NTT-FEの環境・炭素会計支援の特長

NTTファシリティーズエンジニアリングでは、炭素会計を含む環境経営向上支援を提供しています。

・GHG排出量算定(Scope 1〜3)と環境会計の一体的支援
・データ整理から分析・有価証券報告書レポート作成まで対応
・気候関連リスクの定量化・戦略策定まで踏み込んだ伴走型支援

単なる数値整理ではなく、経営判断・脱炭素戦略に直結させる「経営管理会計としての炭素会計」を重視している点が特長です。そしてその会計プロセスには唯一の正解はありませんので、各社の実情を踏まえ必要な事項を整理して、「この会社に合った仕組み」を一緒に考え共に創っていく共創型の支援となります。

今すぐ着手すべきアクションプラン

No
アクション
実施ポイント
1
SSBJ準拠状況の確認
自社が義務化対象(プライム上場等)かを確認し、義務化対象でなくても取引先からScope 3データを求められる立場かも把握する
2
財務・環境データの統合管理
財務諸表と「同時期・同範囲」で開示できるデータ収集フローを情報システム部・財務部と連携して構築する
3
専門支援の検討
Scope 3の精緻化・第三者保証対応など自社完結が困難な領域は、専門機関への相談を早期に検討する

追加調査が必要な事項

・SSBJ基準の具体的な適用開始時期(時価総額別の詳細スケジュール)
・欧州CSRD(企業サステナビリティ報告指令)など、海外拠点がある場合の国際規制との二重対応の要否

炭素会計は「任意の取り組み」ではない

SSBJ基準の確定、CDP・SBTの国際的潮流。これらが連動することで、炭素会計は単なるESGの一部ではなく、企業経営の基盤(OS)となりつつあります。データの正確性、財務との結合性、国際基準への整合性、サプライチェーン全体での対応——これらすべてが求められる以上、炭素会計の戦略的導入は、競争力を左右する経営課題です。

「どこから始めればよいかわからない」「Scope 3算定を本格化させたい」「第三者保証に向けて精度を高めたい」といった課題を抱える企業は、専門的な環境コンサルティングの活用が最短ルートとなります。


どこから始めればよいかわからない」「Scope 3算定を本格化させたい」「第三者保証に向けて精度を高めたい」といった課題を抱える企業様は、
専門的な環境コンサルティングの活用が最短ルートとなります。

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