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個別レポート

働き方改革

2021/04/30
その他

海外の働き方からこれからの日本について考える

 

1.海外での働き方

 日本では「働き方改革」が2019年4月から正式に施行されたが、筆者は外資系エンジニアリング会社に勤めていることもあり、海外ではどのように取り組んでいるか、と聞かれることがよくある。しかしながら、「働き方」を「改革」しようという動きを海外から聞いたことはあまりない。国が働き方の改革を推進するというのは奇異に見えるが、少子高齢化による労働力人口の低下と捉えた方がしっくり来る。筆者が所属しているアラップ社は33か国、88のオフィスに約14,000人のスタッフがおり、海外との違いを考える上で、今一緒に仕事をしている海外の同僚(マネージャークラス以上)何人かにそれぞれの普段の働き方や国の状況を聞いてみた。

 まずは、アラップ本社があるイギリス北部のニューカッスルオフィスにいる同僚によると、アラップUKの契約上の労働時間は週37.5時間であるが、ほとんどの人たちは週37.5~42.5時間働いておリ、年齢が上がるほど労働時間が増加傾向にあるという。彼本人は労働時間が多い部類に属しておリ、週45~55時間と、多い時で一日3.5時間の残業をしていることになる。法的には、1998年制定の「Working Time Regulations 1998」があり、17週間の平均労働時間が週48時間を超えてはならない。これを超えて労働する場合は、この制約の権利を放棄する書面上の同意が必要であるが、彼の周りではかなり稀とのことだ。興眛深い点は、残業時間が多い自分のことを、彼は「悪い例」と言っており、定時に終わらせる人がベストという思想が垣間見える。同僚の名誉のために付け加えると、彼はとても優秀な同僚であり、それゆえ他国との仕事も多く、時差のために必然的に時間外の業務も多くなる。

 続いて、インド第2の大都市であるムンバイオフィスの同僚によると、時期によるが、彼のチームは残業時間がだいたい5日間で一人10時間程度であるが、提出間際は深夜まで業務が続く場合も多々ある。一方、インド全体としては「サービス残業」が多く、その背景には、残業を多くしている人ほど優秀と判断してしまうマネージャーが多いとのことだ。この傾向はリーマンショック以降顕著になっており、仕事を失いたくないがためにサービス残業が増えてしまうそうである。

 次にアラブ首長国連邦のドバイオフィスの同僚は、自分の普段の働き方を教えてくれた。昼休憩をほとんど取らずに一日10時間、週50時間程度が普段の労働時間とのことである。ドバイオフィスは、地理的に中間地点に位置するため、アメリカやアジアとの仕事も多く、早朝や夜遅い時間での打合せも多くなる。

 また、イスラムの週末休みは金曜日と土曜日であるため、金曜日は連絡がつく状態となるよう気を付けているとのことだ。ドバイオフィスのダイレクタークラスの上司たちは率先して早く帰るようにしており、スタッフ全員か帰りやすい雰囲気を作って、ワークライフバランスの確保を推奨している。タイのバンコクオフィスでも残業は多いが、「おおらか」な文化なためか、徹夜して締め切りに間に合わせるということはせずに、締め切りをずらすこともしばしばあるそうだ。

 オーストラリアのシドニーオフィスは、勝手なイメージで残業が無いと思われがちだが、欧米的成果主義の国であり、成果を出すために当然残業し、場合によってはサービス残業も厭いない。一方で、基本的には定時に仕事を終わらせることが良しとされており、遅くまで仕事をしている人は評価されず、むしろ仕事を素早く仕上げてサーフィンに出かける人の方が評価される傾向にあるそうだ。無駄な残業をしないよう、会議時間は短く、意思決定権を持つ人が参加し、その場で判断し、会議はものすごい早さで行われる。これらの見解は主観的な目線も含まれているかもしれないが、各国の文化や考え方の違いにより、世界の「働き方」は多種多様であることがわかる。

 

2.アフターコロナの働き方

 働き方の近未来を考えたとき、新型コロナウイルスの影響を語らないわけにはいかない。アラップは2020年6月頭に、今後3年間の企業戦略の指針となる「Arup Strategy」を社内で発表した。その中で、人材確保を一番に掲げており、世界の多様なタレント(優秀な人材)を確保した上で、それらがより最適な解を、世のためになる選択をしながら、なるべく多くのタレント同士で協働して提供するよう推奨している。協働する手段としてdigitalisationは重要な要素であり、新型コロナの影響により加速していると実感しているが、時代が変わっても人材確保か最重要要素になっていることは興味深い点である。これは海外の他企業においても同様であり、例えばUKのIT企業はリモートワークでも難なく仕事をこなせることがわかり、国内の人材に拘る必要が無く、国外のタレントに目を向けている企業も出現している。UKは就労ⅥSAの取得が難しく、これまでは国内の人材に限定する必要があったが、リモートワークを前提とすれば国外の人材でも理屈的には問題ないことになる。一方で、日本の場合は言語や文化の違いによる問題もあり、海外のタレントをそのまま採用することはまだハードルが高いように思う。

 

3.多様性の許容から始まる

 冒頭で書いたように、働き方改革が労働力人口の低下に対する施策であることを考えると、digitalisationによる生産性の向上、リモートワークの導入による地理的制約の撤廃といった方向性に加え、海外の労働力が参入しやすい仕組み作りも一つの有効な手段かもしれない。特に日本は設計法、言語、文化の違いによるハードルは高いが、構造工ンジ二アなどは世界共通の物理現象を扱う職能であり、相互理解は得やすいと考えるので、積極的に協働する機会を見つけてみてはどうだろうか。例えば、大阪万博2025はいい機会かもしれない。地震国である日本では耐震設計が重要であるため、耐震要素は建築基準法とJIS材による設計としつつ、それ以外の非耐震要素は海外の設計法と材料によってもよいものとし、そのインターラクションは構造工ンジ二ア同士で協議・調整する、ということも考えられる。異なる設計の考え方、仕事の進め方などに触れて、日本の良い点・悪い点を知り、将来につながる学びも多いだろう。「働き方改革」が単純に長時間労働を取り締まる施策と捉えてはもったいない。海外の事例も参考にしつつ、多様な働き方を許容できるような考え方に変えていくのがよいのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

1969年 埼玉県生まれ/ 1994年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/ 1996年 早稲田大学大学院修士課程修了/ 1996年 NTTファシリティーズ入社(~2006)/ 2006年~ Arup/ 現在,同社東京オフィス|アソシエイト|構造リーダー

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