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ZEHについて

2021/08/18
その他

既存改修への課題、可能性…ZEHから考える

 国交省、経産省、環境省の連携による、脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会が4月に行われ、6月のG7にその結論を踏まえた政府の方向性が示された。昨年10月「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、バイデン大統領との首脳会談でさらに加速する動きが急になったためである。この三省合同のあり方検討会で、削減目標図(図1)が示されている。このグラフを見ると、業務、家庭部門ともに新築部門における省エネ性能の向上が6.6%、6.2%を目標としているのに対し、その左の建築物の省エネ化、既存住宅の断熱改修はともに0.8%とほとんど必要ないという数字になっている。

図1 削減目標図

図1 削減目標図

翻って、中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会では 2010 年 12 月に 「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ」をとりまとめた。これは、2020 年に CO2排出量 25%削減、2050 年には 80%削減という日本の中長期目標を達成するために、実施すべき対策・施策やコスト・経済効果などをまとめたものだが、その中に2020年までに新築住宅で次世代基準70%、改修50万戸、2030年までに新築でゼロエミ100%、2050年前にストックで100%とされている。2020年までは新築に力を入れ、2050年までに改修で省エネ化をはかるという計算だった。これが今回の0.8%という低い数字と、新築をさらに強力に押し上げる勢いはどこかおかしい。座長のT氏と議論する機会をもったが、かれはこれを今まで寒い大きな家で暮らしていた人が省エネ改修で家中が暖かく、消費エネルギーは大きくなってしまった。このような事例が多く報告され、改修ではCO2削減はできないと経産省が計算したのだといわれる。

 2018年度に国交省から委託を受けて土浦で空家を含む改修事例の調査を行ったが、その中の設計者とのインタビューでは、殆どの改修は設備の老朽化によるもので、省エネ改修などはとても難しい。普段は数十万円、50万円にも満たない改修をやっていて、もし省エネ改修をするとしたら500万円以上の改修となるだろう。これをしようと思う施主がいるかが課題だという意見が多かった。また、地方都市には多いのだが、1950年代から70年代の高度経済成長期に建てられた戸建て団地の住宅性能は特に特に悪く、改修するより解体・改築を進めるほうが自然だとのこと。改修を進めることの難しさを知ったものである。

 東京建築士会では筆者が会長時代にストック委員会を設け、今後来るであろうストック社会への対応をずいぶん熱く議論してきた。若い設計者の中にはこれまでの建築士の役割を超えて、不動産分野から考える設計者もいたり、施主とDIYを一緒に行うというセルフビルドの指導をするという設計者も現れていた。


写真1

このような動きをこれからの建築士賞という賞で表彰する制度もこしらえた。また、低炭素社会推進会議では総合改修タスクフォースをつくり、改修をばらばらに行っている現状を、耐震補強、省エネ改修、バリアフリーを総合して一回で行うべきという提言も出している。筆者は秋田の鹿角市で福祉団体を運営している友人の依頼で旧家を改修して地域交流や高齢者福祉の施設として利用した経験がある。その例をみていただきたい。平安時代から栄えたこもせと呼ばれる雁木で有名な毛馬内町(写真1)があり、その奥になる造り酒屋の母屋と酒蔵の改修(写真2Before After外装、写真3内装)である。

写真2外装 Before(左) After(右)

写真3内装 左:土間を健康増進ラウンジに改造 右:今の一部に斜め格子耐力壁を挿入

 一方写真4は同じ毛馬内町の中心の麹家の改修である。それぞれ一番大変なのは玉石に石場建ての基礎を土間コンを打ち、鉄筋で柱や束を固定し、床下暖房をできるようにしたこと、ふすまの一部を斜め格子入りパネルとポリカーボで耐力壁とし、全体を耐震性のある建築に改修、同時に省エネとバリアフリー改修を行ったものである。最初は柱の根元が腐っていたりして難しいと思ったが、根継ぎの技術などで柱は復活できる。屋根は最も断熱性能が必要な部位だが、2階を利用せず、床に天井断熱材として敷き詰めればコストも少なく済む。いろいろな工夫を重ねて使えるところを少なくしても快適な家ができると確信している。

写真4 左:毛馬内本町の中心にあり、大広間は地域の人の場として賑わっている。  右:中庭を保全し、糀場はかなり痛んでいたが、床下の耐震化によって改修。古い家の改修は、材料が素晴らしいため、同じ工事費を懸けてもそれ以上の付加価値をもらえるようで、今後とも可能性は大きい。

 今後、低炭素社会推進会議や士会連合会環境部会でも、今後の研究方向は既存改修に向けた議論と実験を進めていこうと考えている。ぜひ、本当の改修の進め方、それを後押しする助成などのインセンティブの与え方など、多方面からの検討を行っていくつもりである。

 

 

BNA中村勉総合計画事務所代表取締役、ものつくり大学名誉教授、低炭素社会推進会議代表議長。(一社)木創研理事長。UIA ARESメンバー。ADB登録環境建築コンサルタント。

1969東京大学卒業.槇総合計画事務所、AUR等を経て1988中村勉総合計画事務所設立.ものつくり大学、工学院大学で教授、元JIA環境行動ラボ代表、元東京建築士会会長

作品受賞歴:建築学会作品選奨、欧州先進建築家リーフ賞、アルカシア建築賞、BCS賞、JIA環境建築賞など受賞多数。ZEB環境建築として、大東文化大学、みなと保健所、七沢希望の丘初等学校、森山保健センター、東松山化石体験館、堯舜インタナショナルスクールなど、自然素材の木創研ZEHとして広窓パッシブ型ゼロエネハウス、木更津オフグリッドハウスからSmart Cityへ展開

 

 

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