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コラム

省エネ感染リスク低減対策

2021/01/22
省エネ

Withコロナ時代の省エネ感染リスク低減対策について

 

 2019年12月に中国の武漢市で原因不明の肺炎患者が確認されて以来1年が経過したが、新型コロナウイルス感染症は全世界に蔓延し、北半球が冬期に入ってから感染の勢いが増して収束の見通しが立たない状況にある1)。日本では2020年3月9日の段階で「三つの密」がクラスター発生リスクになるとして、換気の励行の重要性を指摘した2)。その後3月30日に具体的な換気対策として、一人当たり30m3/hの換気を確保することが換気の悪い密閉空間を避けるために必要としたが3)、冬期に入りこれに加えて室内温湿度条件を、温度18℃、湿度40%以上にすべきとした4)。従って、この温湿度条件を守りつつ、換気を確保することが必要となるが、この換気量を満たせば感染を確実に予防できるとはいえないとしていることから、さらなる感染リスク低減策を取り入れることが望ましい。一般に換気量の増加と室内温湿度環境はトレードオフの関係にあり、温湿度環境を維持しつつ換気を増やすと熱損失の増加が避けられない。そこで、換気損失の増加を抑制しつつ空気感染リスクを低減する省エネ対策について考える。

熱交換換気 エアフィルタ UVGI

 換気損失を抑制しつつ換気量を増やす一般的な方法は熱交換換気である。静止型熱交換器の場合、素子をウイルスが通過することはなく、回転型の場合でもパージセクターが設けられ、適切な圧力の状態(還気系圧力<給気系圧力)であれば、漏洩の影響は少ない。次に中央式空調システムにおけるエアフィルタの効用について検討する。中央式空調システムのメインフィルタには一般に中性能フィルタが用いられるが、その捕集性能は表に示すASHRAEのエアフィルタ規格MERV Rating(最小粒子捕集率報告値)5)の11~14に相当する。一方、新型コロナウイルスと粒径(0.1μm)がほぼ同じ、インフルエンザウイルスを含む飛沫の粒径別ウイルス分布を、医療施設で調べたLindsleyらの報告6)によれば、ウイルスはウイルス本体よりもかなり大きい1μm以上の飛沫に8割以上が含まれるとしている。これよりMERV11~14のエアフィルタによるウイルスの捕集率を求めると70~91%となり、新型コロナウイルスのかなりの捕集が期待できる。図にインフルエンザウイルスを想定して相対感染リスクを感染確率モデル7)を用いて計算し、感染リスク低減を換気量増で対応した場合とエアフィルタ性能で対応した場合の年間空調コストの試算結果を示す。MERV14程度までは、ファン動力増によるコストの大幅増なしに、効果的に感染リスクを低減できている。なお、個別空調方式の場合のエアフィルタは中央式に比べて劣る場合が多いが、この場合もエアフィルタの性能向上オプションが用意されている。また、空気清浄機も同様の機能が期待されるが、厚生労働省ではHEPAフィルタによるろ過式で風量が5m3/min程度以上のものを使うことを推奨している4)。

次に、ウイルスを含む室内空気に紫外線を照射することでウイルスの不活化を狙うUVGIを紹介する。UVGIとはDNA分子が吸収する紫外線を照射することで、分子構造を変化させて病原体を不活化するもので既に市販品もある。スタンドアロンでエアフィルタと組み合わせたポータブルUVGIファンユニット、空調機の還気側に組み込んだ空調内蔵システムがある。幅広い病原体の不活化に有効であることから、今後の研究と製品供給が期待されるところである。

 

新型コロナウイルスの流行が始まって以来、全世界の研究者から続々と新知見が報告され、ある程度、この病気の輪郭が見え始めたところである。日本における感染者、死者数が欧米と比べて少ない理由であるfactor Xの候補として人種による遺伝の特徴やBCGの効果が挙げられているが、三密がクラスターのリスクになること2)を世界に先駆けて指摘し、空気感染の可能性から換気対策に重点を置いたこと、ソースコントロールとしてのマスクの着用が浸透したことが少なからず影響したのではないかと思われる。建物の換気対策を効果的に進めることで、感染者数の急拡大を防いだ状況を維持したままワクチン開発などの抜本的な問題解決に間に合うことを祈るばかりである。

 

参考文献

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