NTTファシリティーズエンジニアリング

個別レポート

脱炭素化について

2022/01/19
その他

建築の脱炭素化について考える2         

  前回に続き、大東文化大学板橋キャンパスの実例で空気の一方通行の流れにより空調エリアを1/2にできるについて話していきたいと思う。現在のコロナ禍で空気感染の課題が新たに議論されている。私は2001年に始めた高森町あさぎりの郷という特別養護老人施設で加齢臭化を避けるための新鮮空気一方向暖冷房を提案し、成功した経験をもって、大東文化大学でも新鮮空気一方向暖冷房のシステムを完成させた。暖冷房システムは温風を利用する空気システムと、温水や電気ヒーターでの床暖房と大きく二つの方向があり、芸大の奥村先生の考案したOMシステムは加温空気で床を暖める方式で、温水に比べ、耐久性能などの点で優れていると聞いていた。このシステムに近い方法で空気を暖めることとし、高森の施設では鉄板屋根の内側に40㎜の空気層を設け、その内部空気を共用空間の床下に導入する方法を考案した。その後、室内に導入した空気を陰圧下の個室からトイレに導入し、外部に排気する方式にした。これは非常に良く機能し、今でもよく利用されている。

 この方式を大東大でも採用できないか考えた末、考えられるあらゆるエネルギーを動員しようとした。地中の温度を汲み上げる中空杭地中熱利用、コージェネ温水を蓄熱する地下蓄熱層、新鮮空気のトレンチ内加温システムなどを利用することとした。教室棟南の広場地下には旧図書館の地下躯体を利用して、解体した上部躯体のコンクリートガラを30㎝くらいの大きさにして詰め(空隙率約40%)、ここを温水蓄熱層とする計画だったが、温水パイプの敷設へのガラの影響など、不明な点が多く、最終的にこのタンクは雨水流出抑制タンクとすることとした。その他貯温タンク利用の部屋をつくり、解体ガラのさらに細かなガラはインターロッキング舗装に加工し、粉末は舗装下地に利用した。こういう解体材再利用の方法はどこでも可能な方法であり、普及するよう提案したいと考えている。

設備断面図

 これらの地中熱/蓄熱エネルギーは外調機に導入され、新鮮空気を加温する熱源として利用している。新鮮空気は広場の2本の彫刻塔から採取し、地下トレンチを約150m通って外調機に入る。その間、約7℃くらい温度は高められる(熱効率としては約35%か)ので、非常に効率的である。外調機で暖められた暖気は5本のダクトで上階に運ばれ、各階の床下に導入され、ペリメータ側のスリットから室内に入る。各室では温水ファンコイル機で加温することも可能である。基本的には床面を暖め、放射熱で人体に伝達することが主目的であり、室内での空気による加温は補助的である。その後、室内空気は上部にあるスリットを通して中廊下に漏れ出、ダクトの小吹抜から4階上部のソーラーチムニーのスリットから外部へ流れ出ていく。そうして一方向の空気の流れは理解される。教室棟で利用される空調エネルギーは、パッシブ手法としての計画的面積削減に加え、ダイレクトゲインで暖かい環境が可能となり、アクティブな空調は杭を利用した地中熱や季節をまたいで蓄えたコージェネ蓄熱エネルギーなどによって最小限の約40%にまで削減が可能となっている。給湯エネルギーもコージェネ蓄熱層を利用し、照明・電気エネルギーは正面とスパイン空間の屋根のシースルー太陽光発電ガラスから30kwの発電を行っている。パッシブ手法が最も有効であるが、その中でも計画論的に工夫することで高層キャンパスでなく、空調エリアを1/2に縮小できるのである。ここまで2回に渡り大東文化大学の実例から設計・計画の話をしてきた。このコラムを通して日々使用する環境について少しでも意識するきっかけになればいいのではないかと考えている。

 

 

 

BNA中村勉総合計画事務所代表取締役、ものつくり大学名誉教授、低炭素社会推進会議代表議長。(一社)木創研理事長。UIA ARESメンバー。ADB登録環境建築コンサルタント。

1969年東京大学卒業.槇総合計画事務所、AUR等を経て1988年中村勉総合計画事務所設立.ものつくり大学、工学院大学で教授、元JIA環境行動ラボ代表、元東京建築士会会長

 

 

 

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