NTTファシリティーズエンジニアリング

個別レポート

インターナル・マーケティング

2017/04/03
オフィス環境

マーケティングには「エクスターナル・マーケティング」と「インターナル・マーケティング」の2種類があると言われています。エクスターナル・マーケティングは、通常我々が考えるように外部顧客に対しいかに働きかけるか、という課題です。一方、インターナル・マーケティングは、直訳すれば「組織内部のマーケティング」ということになります。
インターナル・マーケティングという言葉はあまり耳慣れない言葉ですが、エクスターナル・マーケティングと同様に企業にとって重要な経営活動の一つとして考えられています。インターナル・マーケティングでは、自社の社員も顧客と考えます。
早稲田大学ビジネススクール教授木村達也氏によると、インターナル・マーケティングの定義は、「組織がその目標を中長期的に達成することを目的として実施する、内部組織の協働のための一連のプロセスあるいはコミュニケーション」であり、企業が競争優位を保つために必須の活動と位置付けられています。
インターナル・マーケティングを実現し、成果を上げるために整えなければならない条件や環境として、
①部門内、部門間、階層間の透明性を確保すること。
②オフィス空間のあり方。ただ事務的な作業をこなすだけのところではなく、個人が創造性を発揮し、チームの仲間が自然と交流することにより、新しい価値が生まれてくるための空間。
③優秀な人材を集める。
④「機嫌のいい職場」をつくる。風通しの良い雰囲気で協働を促すような文化。
が挙げられますが、この内、①・②・④に関しては、オフィス環境やオフィスレイアウトなどのオフィスデザインの善し悪しが影響すると考えられます。逆に、インターナル・マーケティングが欠落した企業の特徴として、
①情報が共有化されていない(社員の意識・システム・人と人のつながり方に問題あり)。
②成果主義が効果的に用いられていない(個人の成果主義の矮小化)。
③トップが理解していない(組織リーダシップの欠如)。
④オフィスが物理的に分断されている。
⑤人がたむろする空間や物理的なたるみがない。
⑥プロジェクトベースで仕事を進める習慣とノウハウが組織にない。
⑦各人のプロフェッショナリズムに基づいた相互尊重的な関係がない。
⑧お節介を焼かない。
が挙げられますが、同様にこの内、①・④・⑤に関しては、オフィスデザインにより改善が図れそうです。

以上の事から、オフィス環境の構築に当たっては、単に人や書類、什器類が物理的に収納できる空間を構築すればよいのではなく、組織構造やその間の人や情報の流れ、オフィスで働く人たちの生産性など、ソフト面を十分理解した上でオフィス環境というハード面を構築する必要があります。

(参考)「ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門」  木村達也早稲田大学ビジネススクール教授ほか 日経BP社